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【Onlooker】~サラが見たもの~
第11章 オンルッカー……?
「僕の代わりに、そんな顔をしないでくれないか」
紺野は、言った。
「いや……零子にはいっだって、そんな顔をさせてしまっていたんだね」
見つめ合い、その後で零子は言う。
「あら、どんな顔したって、私の勝手だわ」
「零子……」
「違う?」
そう見据えられて、敵わないとばかりに首を小さく振ると――
「ああ、その通りさ。それと、ついでに白状しようか。やっぱり、少しだけ悔しいみたいなんだ」
紺野はおどけて、そのように告げた。
すると――
「では、慰めてあげましょうか?」
「いいや」
「いらない?」
「いいや……」
紺野はゆっくりと、それを繰り返してから。
「初めて会った時のこと、憶えてる?」
「ええ、もちろん」
「もしも――サラさんによって、僕の中に閉じ込めていた潤の精神が解放された――と、するのならば」
「ならば?」
「あの頃の気持ちを、もう一度、一から積み上げて――」
「無理よ」
「零子……?」
紺野は、零子の顔を見上げた。
「私だって、もう三十になるわ。あの頃のように、ピュアではないのよ。だからこそ、明快な答えなんていらない。曖昧にしていても、たとえ狡く見えたって構わない。その分、大人は辛いのだから――ね、そう思わない?」
零子はそのように言って、もう一度だけ、ベッドの上のサラを肩越しに見る。
後は、大丈夫よね――サラちゃん。
そう告げた眼差しを、次に紺野凉だけに向け――その後で。
今ある、熱い想いを持ちよって――
零子と紺野は、激しい口づけを交わすのだった。