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【Onlooker】~サラが見たもの~
第11章 オンルッカー……?
知らず知らずに自分の心を感じようとせずに、傍観することで安静を保とうとしていた。
両親を失った悲しみを、正しく感情に反映することを暗に恐れていた。サラは無意識の内に、そうすることを選んでしまったのである。
被災して両親を失ったかわいそうな娘。そんな自分の姿を心を、ひっそりとまるで他人事のように眺めていた。このままではいけない――心の片隅では、いつでもそう感じてはいても。
サラはそのまま、心を偽り――誤魔化し続けてきたのだった。
その後、紅谷零子と出会うと、彼女の元でオンルッカーとなり、セックスを通して人の内面を見つめた。
自分の真の感情から視線を背けようとしていたサラにとって、人の内面を見つめることに戸惑いを覚えることはなかった。それどころか、そうすることで気を紛らわすことができた。
自分ではない人の内面を見つめることは、心地よかった。自分自身の感情には深く立ち入ろうとしない分、より多くの感覚を他人のそれに振り向けることができた。
両親を失ったという不幸な事情が皮肉にも功を奏した結果として、サラは偶然にもオンルッカーとしての高い資質を発揮するに至ったのである。
だが――それを長く続けることが、サラのためになるはずもない。そのままにしていたのならば、本当に心そのものを失いかねないのだから……。
それを見抜いていた零子は、サラに例の約束を科していた。そしてサラがそれに殉じようとしたのも、自分の内面で膨らみ続ける大きな不安を、そのままにしておけないと感じていたから――。
そうして――サラは今、黒木に抱かれていた。
激しい騒動と心強い支えを必要として、その身を焦がしてゆくのである――。