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【Onlooker】~サラが見たもの~
第12章 エピローグ
白隅サラが【Onlooker】である自分を卒業した夜。
奇しくも、それとほぼ――時を同じくして。
「……」
華やかな街であるというのに、その女はまるで部屋着のまま近所のコンビニにでも来たような軽装。頭からすっぽりと被ったフードで目元までを包み隠すと、口元を固く結んでいる。
体調が優れないのだろうか。それとも、酒に酔っているのかもしれない。その女の足取りは、ふらふらとしておぼつかない。
どこに向かっているのだろう。頻りと左右に蛇行しながらも、夜の帳の中へ、それでも一歩一歩と足を進めていた。
女が進む先に広がる、その街の名は――銀座。
と、そこで――
「おっと!」
「きゃっ……!」
視線を地面に落としていたから、さもありなんといったところ。女は正面からカップルが来ていたことに気づかずに、歩み続けた挙句その二人との軽い接触を起こしていた。
その結果、仲睦まじく身を寄せ合った二人を左右に割ってしまった形となっている。
女は自分からぶつかっておきながら、ヨタヨタと頼りなくよろめく。そうして、おそらく当人としては意図せぬまま、その場に足を止めた。