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【Onlooker】~サラが見たもの~
第12章 エピローグ
「な、なによ……アンタ」
思わずそう言って非難の目を向けたのは、カップルの女性の方だ。派手なドレスを着飾り、顔には濃いめのメイクを施している。年齢は三十前後だろう。
それを連れ立っていた男性の方は、高級ブランドのスーツで身を固め、いかにも羽振りがよさそうといった感じである。
が、テカテカと街灯が反射する広い額は、生え際が随分と後退しているためであり。チャラチャラとした雰囲気を醸し出してみても、四十をゆうに過ぎていることは隠しようがないのだ。
街柄と、いうべきなのだろう。おそらくカップルの正体は、“同伴出勤”の客とホステスとみて間違いないようだった。
「そっちからぶつかっておいて。黙ってないで謝りなさいよ!」
ホステス風の彼女は更に言葉を強め、フードを被ったままの女に迫る――
「……」
――が、当の言われた本人は、じっと突っ立ったまま。求められた謝罪に応じようともしてないが、その場から立ち去る様子もみせない。
そして、首をゆっくりと左右に動かすと、フードの奥の瞳で二人の顔を順番に”観察”したようである。
十分な時間を費やし、それを終えてから。女は客である中年男に向かって、こう言ったのだった。
「ねェ、おじさん……この程度の女にお金を使って……楽しい?」