この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
【Onlooker】~サラが見たもの~
第12章 エピローグ
「ええ――じゃあ、大変だけどお願いね」
と、零子が通話を終わらせると、ほぼ同時のこと。
カチャ――ドアが開く音を耳にして、零子が訪れていた人物を見つめた。
「やあ」
「あら」
「忙しい――かな?」
「特には――それとも忙しいから『またにして』と言った方が、ホッとする?」
「アハハ――相変わらずだ」
屈託のない笑い声が、狭い事務所に木霊した。
「さ、ともかく入って」
「ああ、お邪魔するよ」
そう言った零子に招かれ、紺野涼がドアから中へ足を踏み入れていた。
「どうぞ」
「ん、ありがとう」
事務所の奥にある社長室に移った二人は、応接用のソファーに腰を据え向かい合った。
「……」
「……」
しかし、互いに視線を合わせることもなく。紺野は零子の煎れたコーヒーの香りを黙って静かに楽しんでいる、といった様相である。