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【Onlooker】~サラが見たもの~
第12章 エピローグ
「あれから、ずっと考えていたんだ。これから先、僕は潤の短い生涯と、どう向き合っていくべきなのか――ってね」
「ずっと考えて――答えはでたの?」
「いいや、難しい。だけど――」
「だけど?」
「潤の望まない、誇れない――そんな、兄(ぼく)でいるわけにはいかないだろう――と、漠然と思うことはできた。きっと――心配していたはずだから」
紺野は淀みのない顔を向けて、そのように言った。
それを受けて、零子は――
「そう思うわ――私も」
優しさに満ちた柔らかな慈愛の笑みで、そう応えている。
大人であるから、想いを秘めたままで。しかし不思議なほどに、二人の心に鬱屈したものはなかったのだろう。
おそらく二人は知っている。また時を重ね、真に互いの支えが必要となる、そんな日が訪れるかもしれない。
互いの読み止しの文庫本を取り違え、互いに興味を抱いた、あの頃のように。歩んできた道のりを交わらせる、そんな時が――。
あるいは、そのまま――再びすれ違ってしまうのだとしても。
「じゃあ、また」
「ええ、また」
二人はそんな不安を滲ませることなく、別れの言葉を告げた。
「また」という曖昧な未来の約束に、その思いを託して――。