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私は女優よ!
第3章 女であるが為に

 甘い時間や至福のひと時なんて、現実より何十倍も加速して過ぎてしまう。

 でも、この時間があるから生きてる実感がした。

 身なりを整えて口紅を塗らないのは、別れ際の最後まで女で居たいからだ。

 名残惜しんで抱き合い、口づけを交した。

 「樂しい時間はあっという間だな」

 あなたからも寂しいという意味合いの言葉を言わせ、私は少し出来た女になる。

 「こんな時間があるから、日々を乗り越えられるの。
また会える日まで、私、頑張れる」

 「愛しいよ。環」

 『そう思うなら、全てを捨てて、私を連れ去ってよ』

 一瞬だけ、そんなラストシーンを思い浮かべた。

 が、そんな思いは儚く砕け散る。

 それが出来たら、不倫なんてしてないよ。
 
 それが出来たら、苦しくなくなるよ。

 それが出来ないからこそ、不道徳な恋を純愛にすら思ってしまうほど、麻痺してるの。

 「帰りたくないな〜」

 私は涙を堪えて戯けた。

 不倫の鉄則は、重い女になってはいけない。

 でも、本音を口走りそうになるくらい、私はあなたが愛しいのよ………
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