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私は女優よ!
第8章 演じきってこそ、女優
 

 もう、父が亡くなってから10年の月日が流れた。

 私は当時大学卒業を控えて司法試験に受かったばかりだった。

 父の愛弟子であった松本雅紀は何かと私の力になってくれた。
やがて私達は愛し合うようになったが、松本には家庭があった。

 ダメだという理性では留まる事が出来ず、私は松本雅紀と不倫の関係を続けている。

 松本雅紀も表の顔は有能な判事。
でも、裏の顔は世の中の不倫男と変わらない。
甘い時間を私と共有すると、家庭に帰っていく男だった。

ーー  



 「憎いわ。
だからこそ、私は弁護士になった。
判決を下す側じゃなく、被疑者のありのままを知る為に」

 「うん。
そんな健気な一子が好きだ。
堪らなく………」

 『あなたを愛する事に一番健気な自分になれるわ』

 今のあなたの瞳は独占出来る。
ねぇ、父親を失い、それでも負けずに法廷に立つ健気な女に映るでしょ。

 これも、本当の私。

 愛しい唇が私を女優にしていく。
無駄な事を話さないようにと封印の印を残して。
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