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人魚島
第2章 人魚島
人の気配が一切無い庭には池があり、鯉や鮒が飼育されてるのか気泡がポコポコ浮き立っている。
鹿威しが設置され、定期的に規則正しくカポーンッカポーンッと首を上下させている。
『鹿威しなんて初めて見たよ』
『ホンマに?この辺りじゃ珍しくあらへんよ?』
咲子が自転車置き場らしい立派な屋根付きの建物に自転車を立て掛けた。
咲子か花子の物なのか一輪車が転がり、ライムグリーンのフリスビーとバスケットボールが並んでいた。
見上げればバスケットゴールが豊かなヤシの木の隣に設置されている。
赤色でペンキが剥げて錆びだらけだ。
『じいちゃん、帰ったでッ!』
咲子が庭先でパチンパチンと盆栽の手入れをしている老人に話し掛ける。
『おお、咲子か、ああ、アンタが東京からわざわざ来た親戚か、全く今まで長年付き合いの無かった我々が父ちゃん死んだ途端呼ぶとか堪忍な』
『篠山春樹です』
『ああ、年賀状すら交わしとらんがな』
そうなのだ。
僕は従兄弟や従姉妹程度なら正月に顔を合わせるが流石に先祖の曾祖父の従兄弟や従姉妹クラスになれば会う事は無く年賀状のやり取りすらしてい無い。
初めて遠い遠い親戚の魚沼咲子に出会ったのだ。
『ばぁさん中で昼飯作ってやるわ、手伝ったれ、誠も来てるぞ』
『はい、じぃちゃん』
ニッコリ微笑みながら僕の手からボストンバッグを手繰り寄せ肩に掛ける咲子。
重たいはずだ、中にはしこたま衣類や夏休みの宿題が入っている筈だ。
『重たいでしょ?』
『大丈夫やで、客人やけん、持て成すけん』
咲子はニッコリしながらズンズン庭を横切って行く。
サンダルが鳴っている。
『ばぁちゃん、帰ったでッ!』
立派な門構えの玄関を跨ぎ中に入ればむせ変える程の線香の香りがムワッとした。
今夜は葬式なのだ。
『ああ、咲子、アンタ三咲知らん?ああ、アンタが噂の東京からの若旦那か?』
70歳位の若い老婆が入れ歯なのか白い歯を剥き出しにしながら『麦茶淹れるわ』と台所に暖簾をくぐり向かう。
咲子が濃紺の座布団をこれまた立派な押し入れから出して卓袱台の前に三つ並べ『座れや』と促す。
『縁側剥き出しなんだね』
僕は縁側から立派な庭園を見渡した。
『じぃちゃんが毎日手入れしてるけん、綺麗なんだわ』
咲子が笑いながら扇風機のスイッチを強に変えた。
『はいはい、お名前は?』
鹿威しが設置され、定期的に規則正しくカポーンッカポーンッと首を上下させている。
『鹿威しなんて初めて見たよ』
『ホンマに?この辺りじゃ珍しくあらへんよ?』
咲子が自転車置き場らしい立派な屋根付きの建物に自転車を立て掛けた。
咲子か花子の物なのか一輪車が転がり、ライムグリーンのフリスビーとバスケットボールが並んでいた。
見上げればバスケットゴールが豊かなヤシの木の隣に設置されている。
赤色でペンキが剥げて錆びだらけだ。
『じいちゃん、帰ったでッ!』
咲子が庭先でパチンパチンと盆栽の手入れをしている老人に話し掛ける。
『おお、咲子か、ああ、アンタが東京からわざわざ来た親戚か、全く今まで長年付き合いの無かった我々が父ちゃん死んだ途端呼ぶとか堪忍な』
『篠山春樹です』
『ああ、年賀状すら交わしとらんがな』
そうなのだ。
僕は従兄弟や従姉妹程度なら正月に顔を合わせるが流石に先祖の曾祖父の従兄弟や従姉妹クラスになれば会う事は無く年賀状のやり取りすらしてい無い。
初めて遠い遠い親戚の魚沼咲子に出会ったのだ。
『ばぁさん中で昼飯作ってやるわ、手伝ったれ、誠も来てるぞ』
『はい、じぃちゃん』
ニッコリ微笑みながら僕の手からボストンバッグを手繰り寄せ肩に掛ける咲子。
重たいはずだ、中にはしこたま衣類や夏休みの宿題が入っている筈だ。
『重たいでしょ?』
『大丈夫やで、客人やけん、持て成すけん』
咲子はニッコリしながらズンズン庭を横切って行く。
サンダルが鳴っている。
『ばぁちゃん、帰ったでッ!』
立派な門構えの玄関を跨ぎ中に入ればむせ変える程の線香の香りがムワッとした。
今夜は葬式なのだ。
『ああ、咲子、アンタ三咲知らん?ああ、アンタが噂の東京からの若旦那か?』
70歳位の若い老婆が入れ歯なのか白い歯を剥き出しにしながら『麦茶淹れるわ』と台所に暖簾をくぐり向かう。
咲子が濃紺の座布団をこれまた立派な押し入れから出して卓袱台の前に三つ並べ『座れや』と促す。
『縁側剥き出しなんだね』
僕は縁側から立派な庭園を見渡した。
『じぃちゃんが毎日手入れしてるけん、綺麗なんだわ』
咲子が笑いながら扇風機のスイッチを強に変えた。
『はいはい、お名前は?』