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人魚島
第8章 能力
ウオトが『長くなるよ』と前置きした。

『その人魚の肉を男の娘または妻が知らずに食べてしまうんだよ、それ以来その女は不老長寿を得る。その後娘は村で暮らすが、夫に何度も死に別れたり、知り合いもみな死んでしまったので、出家して比丘尼となって村を出て全国をめぐり、各地に木、主に杉、椿、松を植えたりする。やがて最後は若狭にたどり着き、入定する。その場所は小浜の空印寺と伝えることが多く、年齢はなんと108歳だったよ、凄いよね。それが八百比丘尼伝承の死生観にも監修されてる。そして八百比丘尼の伝承は日本各地にあるけれど、中でも岐阜県下呂市馬瀬中切に伝承される八百比丘尼物語は浦島太郎と八百比丘尼が混ざった話として存在し、全国的に稀なんだよ。京都府綾部市と福井県大飯郡おおい町の県境には、この八百比丘尼がこの峠を越えて福井県小浜市に至ったという伝承のある尼来峠という峠がある。『康富記』には、15世紀中頃に白比丘尼と言う200歳の白髪の尼で13世紀生まれの尼が若狭国から上洛し、見世物として料金を取った記述があるが、『臥雲日件録』では白比丘尼は八百老尼と同じであると解されているよ。ただし、この老尼は八百比丘尼伝説を利用した芸能者だったと考えられている。当時から八百尼丘尼の伝説は尼によって布教活動に利用されていて、こうした伝説を利用する女性も少なくなかった一例でだよ』

ウオトが再び麦茶を飲みながら『退屈かな?』と笑うので『まさか』と返した。

『つまり全国各地では人魚の肉を食べれば不老不死になると言った言い伝えが古くから残されとる訳や、だからかな、慎三さんも当然漁師だったから、いち早く人魚の僕を食おってした』

背筋がゾクッとした。

『それでどうしたの?』

『取引したんだよ』

不意に真顔になりこちらを見据えるウオトの漆黒の瞳がキラキラ西日を反射させている。

『取引?』

『そう、僕を食べ無い代わりに願いを叶えてやるってね、そしたら人間ってのは単純だな、財を成したいって頼み込んだよ。僕はその願いを叶えてやった。そして取引は成立したが、僕と慎三さんは度々海上で出会う様になった。僕は寂しかったし、なんだか親しい友人が出来た気がしたんだよ』

『慎三さんと友達?』

『うん、良くお神酒傾けて夜中迄話し込んだし、セイレーンと呼ばれる位だ、歌が得意な僕はよく詩吟を聞かせてやったよ』
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