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人魚島
第9章 枝分かれの現実
花子と水を飲みながら『咲子は?』と訊ねれば『今頃家で睡眠薬でグッスリ眠ってるよ』と花子が寂しげに言う。
提供されたカルパッチョは鯛や鮃の酢漬けが甘くなかなか美味い。
カルパッチョ以外に肉じゃがと白米を出された。
不意に花子が三咲さんからピアニシモを受け取り手慣れた手付きで吸い始めた。
何やらこの時空間では咲子は睡眠薬で花子は喫煙者らしい。
『そろそろ帰ろう』花子がジャージの裾を正して美しい顔で笑う。
大きな瞳がウルウル潤んで澄んでいた。

『おい、お前』

立ち上がれば短く借り上げし、無造作に髪の毛を脱色しブルーカラーに染めたツーブロックヘアの若い25~6歳位の男に肩を掴まれた。

『篠山春樹やな?』

『え?』

『篠山春樹じゃろ?ハハハ…傑作やなぁ、そうか、俺や無くて魚人の天使になったんか?』

こいつ、何故それを?
訝しがる僕に彼は続けた。
耳たぶにボディピアスが光っている。

『なんや、花子を助けたいんか?』

『あなたは誰ですか?』

僕が小首を傾げれば彼は話した。

『龍 神一、観光客や』

龍 神一?
龍神だ。
龍神が目の前に居る。
僕は震えた。

『花子を助けたいなら俺に相談すりゃ助けてやったのによ、なんだって魚人の方に靡いたんや?』

『何故それを?』

『もう、龍さん酔い過ぎだよ?』

花子が言えば『すまんな』と僕から手を離すシンイチ。

『ともかく足掻いて俺を楽しませろよ?』

笑いながらシンイチは人混みに消えて行った。
首筋に昇り龍の入れ墨がチラッと見えた。

『自転車あるけん、帰ろう』

『うん』

人混みを掻き分け出口に向かい魚姫の軒先に停められたひしゃげた自転車に股がる。
花子が『出すけん』と笑い僕等は魚沼家に帰宅した。
宗一さん、静枝さん、誠さん、春香さんの姿は無く、蛍光灯が付いた居間に見慣れた後ろ姿があった。
咲子だ。

『お姉ちゃん、起きたんだ?』

花子がサンダルを脱ぎながら咲子の背中に問い掛ける。

『…おかえり』

咲子が呟く。
そしてゆっくり振り返ったその顔には顔が無かった。
僕は唖然としながらただ闇雲に震えた。
咲子は白い花柄のパジャマ姿でフラフラ左右に揺れながら居間に正座していた。

『お姉ちゃん、頓服飲んで寝よう?』

『なんで…』

『え?』

『なんでアンタには顔があって、うちには無いんやぁぁッ!』

『きゃッ』
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