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いつくしみ深き
第1章 いつくしみ深き
「……あのさ、響」

 祐希は言いにくそうに切り出した。式の前に響にどうしても言っておかなければならないことがあった。

「うん?」
「式には俺とお前の親も呼んでるから」
「親……。祐希のところはいいけど、僕の両親は……」

 響はうつむいた。両親に性的指向をカミングアウトし、受け入れられている祐希に対し、響の両親は息子の同性愛を知るや、響に勘当を言い渡した。それ以来響は両親と断絶し、響が入院していることも知らせていなかった。

「実は結婚式を挙げるって決めてから何度もお前の実家に行ったんだけど、結局ご両親には会えなかった。だから式の時間と場所を書いた手紙をポストに入れてきた」
「……そう」
「今日、来てくれるといいな」

 響の両親にはとうとう最後まで許してはもらえなかった。このままだと響は両親に会えないまま。生を終えることになる。祐希は響を何とかして両親に会わせたかった。

「無理だと思う。うちの両親は頑固だから」
「いや。来るよ、絶対。子供に会いたくない親なんているもんか」

 祐希は信じた。信じれば願いは叶うのだと、そう信じていた。
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