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浦島と亀
第3章 本当の浦島


「なぜだ?」

 翳りのある眼差しがあたしを縛る。


「好いてしまって……」


「話したこともないのに?」

「そんなの関係ない」

 あたしは泣きたくなった。

「あんたが恋しくて、苦しくて、どうしたらいいかわからない」


 浦島は少し笑った。

 それから、腰にまわしていた方の手で、あたしの背中をなぞり上げた。

「ああっ」

 また声が出てしまう。


 触れるか触れないかという微妙な指先の動きは、女を知らない男のやることではない。


 浦島は笑ったまま、あたしの顔を両手で包み、かたちの良い唇を寄せてきた。

 頬に触れた唇はそのまま反対側の頬に移り、あたしは焦れて唇を合わせようとするが、浦島は巧みに位置をずらしてしまう。


 意地悪な仕打ちにからかわれている気がして哀しくなり、あきらめて離れようとした瞬間、あたしの口は浦島の唇でふさがれた。

 むさぼるように深く口を吸われただけで達しそうになった。恍惚と陶酔で目の前が真っ白になる。


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