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貴方だけに溺れたい
第7章 貴方に逢いたい
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さすがに5日間は長過ぎる。
手帳にも書いてあるし、忘れるなんて事は無いと思うけれど、今の葵にとっては、来週の月曜日までが途方も無く長く感じてしまうのだ。
昨日は夕方から用事があると話していたけれど、今日は公園に居るのかな?……というか、いつも何時まで仕事してるんだろう?
朝の5時から公園に居るって話は一昨日聞いたばかりだけれど、休みはあるのだろうか?
『棚卸しって今週だっけ?』
『明後日です』
『早いね。8月中にやるんだ』
『ニ八(ニッパチ)で暇だから。うちの店は3月の分も2月にやるんだそうです』
『なるほどね。効率的だ』
『いつも暇なんですけどね……。でも、今週は金曜日は休みだけど、棚卸しが終わったらセールの準備とかで慌ただしくなりそう』
『あ、金曜日は休みなのか。俺、前日から会社の方の仕事があるから、戻らないかもしれない』
『ああ、そうなんですか』
『……もう少し、大袈裟に残念がってくれると嬉しいかもしれない』
『え、残念ですよ?』
『そう?……ここ数年、俺の不在を残念がってくれる人が減ってきて寂しいんだよね』
『どうしてですか?』
『出張が多すぎて、居ない方が当たり前になってるから』
確かそんな会話の流れで今週の森川のスケジュールを聞いたのだと思うけれど、森川は仕事や用事の具体的な説明をする人では無かった。
自分から聞かないせいもあるとは思うけれど、やっぱり"聞く"という行為自体に抵抗があるのだ。
特に"用事"なんて、自分の領域に踏み込まれたく無くて使う場合もあるし、知らなくて良い事まで知る可能性だってあるのだから。
けれども、そんな躊躇いのせいで会話が続かなかったのも事実。
森川の事は"話させ上手"だと思ったけれど、自分は"会話下手"なのだと痛感した。
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