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貴方だけに溺れたい
第7章 貴方に逢いたい
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楽しく"会話"をしていても、必ずどこかでブレーキが掛かってしまうのだ。
例えば、その時だってそうだ。
『出張が多すぎて、居ない方が当たり前になってるから』
その言葉に対しても『えー、そうなんですか?それは今回みたいな仕事が多いって事ですか?』……とか、もっと会話を膨らませる質問が出来たはずなのに、咄嗟に浮かんだ"そんな事無いですよ"という言葉が白々しく思えてしまって、結局『そうなんですか』としか言えなかった。
森川は『そうなんですよ』と苦笑気味に応えていたけれど、そこで話は終わってしまった……。
それだけじゃ無い。
せっかく自分の話を聞いてもらって、アドバイスまで頂いて、『森川さんも、モヤモヤする事ってありますか?』と、自分にしては踏み込んだ質問をしたと思ったのに、『本当はマイナス思考?』なんて失礼な事を言ってしまった挙げ句、森川の『チャレンジャーと言ってくれないかな?』の返答に『わかりました』なんて淡々とした言葉を返すだけに終わってしまった。
本当は"チャレンジャー"の意味も分からなかったくせに……。
勿論すべてが後から振り返って、それが失言だったり、もっと良い言い回しがあったと気付く事だけど、考えれば考えるほど落ち込んでしまう。
そんな自分に対して、森川自身がどう思っているのかは、当然気になっている。
けれど葵自身、もっと気軽に、会話を楽しめなくなっている自分に呆れてもいたのだ。
だから名誉挽回?汚名返上?
本を買った時に考えていたように、自分の考えを理路整然と話して、森川との会話を楽しみたいと思ったのだ。
仕事の話や"用事"の件では、森川のプライベートに繋がるような話になりそうだし、どうしても躊躇してしまうだろうけれど、本の話なら、聞いてはいけないような話にはならないと思う。
だから切り替えよう。
過ぎた事を思って後悔してても仕方無いのだし。
しかしそんな前向きな意気込みさえも、休憩時間が終わる頃には、すっかりと消え失せてしまっていたのだけれど……。
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