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貴方だけに溺れたい
第3章  屈辱と悪夢

"明日、来ますか?…公園……"
原因は、少し前に尋ねられていた同じ質問に答えられなかったせいだ。
"はい"と答えられない返事を先送りにしてしまった罪悪感。

しかし気まずさの為に眉を寄せた葵に対し、森川は察したように"ああ"と口元を綻ばせた。

「明日じゃなくても構いませんよ。俺は当分の間は毎日居ますから」
「はい……あ、月曜日に行こうと思ってたんですけど……」
「月曜日は休みですか?」
「いえ。午後からなので、今日と同じ位の時間に行ってみようかなって……」
「思ってた?」
「……はい……」
「了解です。安心しました」

そう言って頂けると、ありがたいのですが……。

「あの、ごめんなさい。さっき、ちゃんと答えられなくて」

やっぱり自分の躊躇いが原因で脱線してしまった事が気になって謝ると、森川は「ん?」と一瞬何の話が分からないような表情を見せてから苦笑を浮かべた。

「俺の説明不足ですから、謝らないで下さい。それに、本題を言い出せなかったのは俺の方です」
「……本題?」
「この約束の事。正直、貴女から話して貰えて無ければ、俺は延々と脈絡の無い話を続けていたと思いますよ」

そうだったかな……?

森川の話を聞きながらぼんやりと振り返ってはいたが、思い当たる事なんてあるわけが無い。
葵が知る限り森川は普通に話をしていたと思うし、それ以前に彼の心境を察する余裕は無かったのだから。

しかし頭に疑問符を浮かべてキョトンとした葵の反応に、森川はただ笑うだけで、その先を話す事はしなかった。

ただ、ふと思い出したように玄関側へと視線を向けた彼の様子で、葵自身も今のこの状況に改めて気付いたのだけれど……。






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