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貴方だけに溺れたい
第3章 屈辱と悪夢
「良かった……」
謝る葵を宥めるように首を振った森川の表情には安堵が浮かんでいた。
しかし葵自身の緊張は変わらない。
彼の穏やかな反応に少しだけ安心はしたけれど、状況は何も変わっていないのだ。
「……正直に言えば、気になってました」
「………」
しかも改めて"気になっていた"なんて言われてしまえば、返す言葉も見付からない。
自分の弁解が漠然としたものだという事は分かっていたけれど、具体的な理由なんて話せるわけも無かったのだ。
しかし森川は、再び沈黙してしまった葵に向けて、少しだけ困ったような微笑を見せただけだった。
「葵さん」
「……はい」
対して彼の心境を知らない葵は、名前を呼ばれるだけでドキドキしていたが……。
「約束しておきませんか?」
「……え?」
「次に会う約束です」
「…………」
約束………?
一瞬、言葉の意味が分からなかった……。
それは先に彼が口にしていた"気になっていた"という言葉にとらわれていた為ではあるが、明らかに把握していない葵の反応に、森川は焦ったように付け足した。
「公園でですよ!?」
「あ……ああっ、はい、はいはい!」
その約束か!
しかし彼に釣られるように葵も慌てて頷いていたが、恐らく"焦って"いたせいもあるのだろう。
気付けば先ほど尋ねられた時とは違い、余計な事を考えずに素直に頷いていた自分に驚いた。
ただ、そんな些細なやり取りのおかげだろうか。
葵のリアクションに愉しそうな笑みを見せた森川と同様に、葵の表情にも僅かにだが、ホッとしたような安堵の色が浮かんでいたのだ。
けれど……。
「……あっ、でもごめんなさい」
「ん?」
「明日は仕事なんです……」
今度はなんだか、すごい罪悪感……。