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貴方だけに溺れたい
第4章 秘密
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「だからさぁ……」と飽きれ顔で言われる筋合いも無いけれど、葵は無言のまま頷いて先を促していた。
言いたい事はやまほどあったが、朝からこんなくだらない事で険悪な雰囲気にはなりたくは無い。
それに葵は、智之に対して苛立ちながらも、森川の"タトゥー"の話に関しては"意外性"という意味で興味はあった。
タトゥーなんて何処に入れてるんだろう?
腕?胸?背中?お尻?
あの場で森川さんは脱いだのかな?
『いい身体してますね』なんて話題で、胸筋や上腕二頭筋を見せてくれなんてせがまれて……もしかしたらシックスパックだったりして……いいなぁ……生では見た事無いんだよねぇ……。
思考が別方向に向かっていったのは、智之への対応に対して余裕があったからだろう。
「普通しないでしょ?いい大人が」
「何処に入れてるの!?」
「……このへんからチラッと見えたよ?」
肘より少し上。
シャツの捲り部分から見えたのだろう。
「その位ならファッションで入れてる人もいるでしょうよ。理由もあると思うけど」
「理由があったって、印象悪いでしょ?よく考えてよ」
お前がな。
「印象悪いの?森川さんて」
それは絶対に無い。
たぶん昼間に出会って話していなくても、悪い印象は全く抱かなかったはず……と葵は確信していた。
しかし葵の質問に対して、智之は眉間を寄せ、困惑したように首を傾げた。
「いい人だよ。ただ裏がありそうっていうか……なんか威圧的?」
「……知らないけど……」
私に聞いてどうするんだ…と言いたくなるほどまどろっこしい。
けれど"裏がありそう"とか"威圧的"なんて言われれば、早くその理由を聞きたくるのは当然の事。
葵の頭の中は疑問符と、智之に対する納得のいかない苛立ちでいっぱいだった。
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