この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Leverage Effect〔レバレッジ イフェクト〕
第2章 罠 ─仕掛ける─
「いつもながらに素早い対応だったね。トソー株が放出される前に大幅な増配を提案するとは…。須藤会長も喜んでおられたよ。でも、よくこんな事前にTOB(株式公開買い付け)の情報を入手出来たもんだな。アメリカで培った人脈かい?」
「…いえ、たまたまデータ解析でピックアップしていた優良企業の中に、トソーがあったというだけのことです。ある程度のシミュレーションがしてありましたので…」
部長からのお褒めの言葉も、澁谷は顔色一つ変えずサラリと受け流す。
切れ長の二重瞼、肌や髪と同じく色素の薄い瞳、柔らかく額に掛かる栗色の髪─
冷静かつ的確な判断力と、素早い行動力で、生き残りを掛けて日夜激しくしのぎを削るマーケットを読む男の外見は、意外なほど若かった。
澁谷直之(しぶやなおゆき)──若干26歳にして営業課長を勤め、トップクラスの成績を上げるエリート。会社首脳陣からも大きな信頼を寄せられる男。