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Leverage Effect〔レバレッジ イフェクト〕
第2章 罠 ─仕掛ける─

「いつもながらに素早い対応だったね。トソー株が放出される前に大幅な増配を提案するとは…。須藤会長も喜んでおられたよ。でも、よくこんな事前にTOB(株式公開買い付け)の情報を入手出来たもんだな。アメリカで培った人脈かい?」

「…いえ、たまたまデータ解析でピックアップしていた優良企業の中に、トソーがあったというだけのことです。ある程度のシミュレーションがしてありましたので…」


部長からのお褒めの言葉も、澁谷は顔色一つ変えずサラリと受け流す。

切れ長の二重瞼、肌や髪と同じく色素の薄い瞳、柔らかく額に掛かる栗色の髪─

冷静かつ的確な判断力と、素早い行動力で、生き残りを掛けて日夜激しくしのぎを削るマーケットを読む男の外見は、意外なほど若かった。
 
澁谷直之(しぶやなおゆき)──若干26歳にして営業課長を勤め、トップクラスの成績を上げるエリート。会社首脳陣からも大きな信頼を寄せられる男。

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