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Leverage Effect〔レバレッジ イフェクト〕
第3章 捕食─墜す─
突き入れた舌で、濡れた口腔を舐め回してやると、澁谷の口から甘い喘ぎが漏れる。
いつもなら情事の後の戯れは、絶対と言っていいほど抵抗を示す澁谷にしては珍しい。
澁谷の細い指先が何かを探し求めるように脇腹を伝う感覚に背筋がゾクリと震えた。
切ない眼差しに射竦められて、時間の止まった空間に縫い止められる。
それはどこか懐かしい面影。澄んだ瞳の奧にある淋しそうな表情は、嘗て何処かで見たことがあった。
「…どこかで会ったことが……」
「……」
言葉の代わりに西沢の腕を縋るように握り締める澁谷。
西沢の胸のなかで聞こえたのは小さな嗚咽だろうか──
知らなければ苦しまずに済むこともある。知らなければ悩むこともなかった。
でも…知ってしまった事実を今更、否定することは出来ない。