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第26章 君のために

これ以上ないってくらいの優しい視線──

夏希ちゃんはそんな眼差しで笑い掛けてくる。

初日からかなりハードな旅行だったけど、この笑顔にちょっとだけ癒された気がする。。。


あり得ない出逢いにあり得ない展開で付き合い始めた二人だけどこれからもあり得ない出来事が押し寄せそうだ……


手を繋いで歩きながら身を寄せる──

好きっていう感情と愛しいという想い


肌寒い風からさりげなく夏希ちゃんに肩を庇われて妙に胸が温かくなっていた……


旅館に帰り着いて健兄達と別れ、部屋に入る。
本館から離れた五つしかない個室部屋は一室々に日本庭園のような庭と露天風呂が完備されている。

すっかり暗くなった部屋の外は風情ある和式のランプでライトアップされていた──

庭を眺めてから二部屋続きの奥の間の襖をスーッと開ける。

「──…！…」

目の前には床置きの朱色のランプに照らされた妖しげな寝室。

まるで江戸時代の殿様の寝所だ…

二つの布団が並んだその部屋に思わず息を飲んでいると背後から夏希ちゃんが抱き締めてきた。

「晶さん疲れてるから今日はゆっくり休もうか？」

「……うん…」

仮病を装い散々心配を掛けたあたしの身体を夏希ちゃんは気に掛けてくれている。