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ラブプレイ〜Hな二人の純愛ライフ〜
第32章 これがTV局
「ふ、藤沢さん…撮影始まるよ…っ…」

「……っ…」

虎太郎はプロだ。小さくてもれっきとしたプロの役者だ。

普段は見せたことのない俺の変わりように微かに怯えながらも今から仕事だとそう告げてくる。

虎太郎のその言葉に怒れる自分を抑えると、ADが慌てて俺をスタジオに押し込んだ。

背中を押されながらも俺は晶さんを振り返る。

一言言いたいんだけどあまりの怒りでその言葉がでて来ずに、俺はただ、晶さんを睨むと背を向けた。

「藤沢さん……」

パイプ椅子に腰掛けて、撮影準備を待たされる俺を虎太郎が心配そうに覗き込む。

怒りはやっぱりさっきから治まらないままだ。

あれだけお願いしても信じられない行動に出る恋人にやりきれない溜め息だけが強く吐かれる。

「虎太郎…」

「……はい?…」

「俺の顔、両手で叩いて……」

「………」

「おもいっきし、これでもかって力で…」

「………それで撮影にシュウチュウできますか」

真面目に聞き返す小さな虎太郎に頷いて見せる。

虎太郎もそんな俺と同じように頷いた。

微かに気合いを入れた表情で、虎太郎の小さなもみじのような手が俺の頬を両側からピシャリと弾く。

「──…っ…」

「あ、しっぱい」

「…っ!?……」

「あ、今のは無しで」

「………!」

「よしっ!! カンペキっ」

「───っ…」


虎太郎はプロだ。そんな彼の辞書に妥協と言う言葉は見当たらない──

よって…

一度だけ気合いを入れてもらうはずが何故か計三回の両ビンタを食らう羽目になり、

俺は赤い頬で歯みがき粉の撮影に挑んでいた……。


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