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ラブプレイ〜Hな二人の純愛ライフ〜
第36章 想い違い

「……あー…無理だあー…もうだめだぁ…っ」
泣きたいっ…
「ははっ! なんの嘆きだそれは」
休憩用に準備されたパイプ椅子に身体を預け、虚脱感ありありにぐったりとして喚く。
そんな俺を笑いながら、強面顔の葛西さんが煙草に火を付けた。
「新しい役作りか?」
「…こんなに嘆くってどんな役ですか…」
目尻に溜めた涙目で隣に腰掛けた葛西さんをジロッと睨んだ。
葛西さんは還暦を過ぎたベテラン俳優だ。
Vシネマの名脇役として活躍していたこの人も、最近は表舞台によく顔を出すようになったと思う。
「引きこもりか鬱の役とか?」
「病んでる系の人しか嘆かないって決め付けじゃないですか、それ」
「はは、」
俺の質問に対して丁寧に考えた答えがこれだった。
ただ、今の俺は確かに考え過ぎて鬱に入りそうだ。
昨日の騒ぎから夜が明けた今日──
よりによって、遥々遠方で三日間泊まり込みのロケ。
俺は思う──
この世に神は存在しない。
すがるものさえ見つけられず、休憩の度にメールを送っては晶さんの返信無しを確認して俺は溜め息をついていた。

