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ラブプレイ〜Hな二人の純愛ライフ〜
第37章 泣けない夜

「あ、晶ちゃん。アレは?」
「アレ?……ああ!伝票の棚に挟んでありまーす」
看板を店に入れていると厨房からママが顔を見せた。アレって聞かれただけで一瞬考えたけど何となくわかった。
年のせいかマスターもママも、最近パッと言葉が出てこないことも多く“アレ・ソレ”ばかりだ。
よって、言葉よりも今、何が言いたいのかの意思を読むのにあたしもだいぶ慣れてきたと思う。
「明日、田渕さんがくるから渡しておくわね」
「はい、お願いします」
棚を確認したママに礼を言って、玄関口の明かりを消す。
普段より一際賑やかだった今日も、お客さんがはけた今はとても静かで物寂しさを感じる。
店内の照明を落としたせいだからだろうか。
店仕舞いを済ませ、マスター達と一緒に裏口を閉めるとあたしは仲良く腕を組んで帰る二人の姿を見送った。
常連客を巻き込みながらも思いきり言い合ったお陰か、すっかり仲直りしたオーナー夫妻。
結局はママがマスターの軍資金を取り上げて機嫌が直っただけなんだけど……
「ふふ……」
思わずマスターの悲しそうな表情を思い出して笑いが零れた。
仲睦まじい二人の背中はどんどん小さくなっていく。
春を前にして夜風はまだ冷たい。
身体を寄せ合って歩く二人は夫婦ってよりも恋人同士って言葉がよく似合う。
そんな二人を見ているとちょっとだけ羨ましく思えた。

