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シミュレーション仮説
第4章 シミュレーション世界の終焉
 それは突然、しかしそこに住む者には誰一人として気が付かれることもなく世界は止まった。

 少女のスカートの裾を巻き上げたままの形で風は止まり、空に向かった噴水の水は落ちることなく空に浮き続けている。

 シミュレーション世界は停止された。

 増えすぎた人口と広がりすぎた人類の行動範囲がシミュレーション世界を構築するコンピューターを圧迫したのがその理由だ。

 理想の正解を実現するためにあらゆる手が加えられた世界は人口が大きく増えた。平均寿命は百歳に迫り全世界の人口は三百億を超えた。
 科学を発展させた人類は積極的に宇宙に進出し、今までは「設定」としてそこにあるだけだった遠い宇宙の星々までもが作られていった。

 もともと超巨大なスーパーコンピューターに加え一般ユーザーのパソコンともネット経由で接続され、その一部を借り受けることによって生まれた膨大な容量と圧倒的な処理速度によって支えられてきた世界だった。

 しかしそれでも追い付かないほど、世界は大きくなった。

 それは様々な歪みとして世界中に影響を与えた。

 異常気象が相次ぎ生態系に乱れが生じた。
 かつてないほどの巨大地震が起き、人類が想定していないほどの大きな津波が町を襲う。

 地球の動きをコントロール出来なくなってしまったせいで起こった現象だった。

 ある国では突然道路が陥没する、という事故が立て続けに起こった。

 通常なら何かしらの予兆があって結果があるものだ。
 なのに何もなく、突然道路に大きな穴が開いた。

 これも歪みのひとつの現れだった。


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