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第8章 二人で自慰をして

土井咲子とは同じ駅から違う方向の電車に乗って別れて、木戸は自分の家に帰ってきた。

少々飲みすぎたか、頭がふらつく感じがする。

鍵を開けてドアを開くと一枚のドア・ガラスを通して部屋の中に電気が灯っているのが見え、加えて玄関に飯島亜紀子の黒いパンプスがあるので来ているんだなぁと思った。

それだけでやはり嬉しい。

部屋へのドアを開けて中に入る。

小さなキッチンを抜けてた先の扉は開けられたままで、その先の部屋の食卓テーブルに飯島亜紀子はカーテンを閉めていないベランダの方を向き、こちらには背を向けて座っていた。

そして男が声を掛ける前に振り向いて、「お帰りなさい。早かったわね」と言われると、その女の周りの空気がなぜだか卑猥な色に淀んで見えた。

「来てたんだ」