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第2章 運命の悪戯

　乾は当代の国王、王尚の甥だった。乾の実父昌が高麗王尚の弟なのだ。乾の両親はいずれも早く亡くなった。母は高麗王室に古くから仕える重臣の娘であったが、乾を生むとまもなく難産のために、この世を去った。父は国王の名代で地方の視察に赴いた先で、潜伏していた反国王派の一味に暗殺された。







　これは後に知ったことだが、公では父を殺したのは反国王派の高麗人ということになっているけれども、実は高麗人ではなく、元国の人間だったらしい。当時、高麗は元国の朝貢国として常に臣従する立場に甘んじていた。