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第5章 優しい日々

　賢は一度だけ元を訪れたことがあった。元皇帝が是非とも愛孫を見たいと熱望したために実現した元国訪問だった。






　その時、賢はまだ三歳になったばかりで、母の乳母であった尚宮に抱かれて参内したのである。初めての謁見は玉座の間で行われたが、皇帝は尚宮に抱かれた高麗の幼い王子が現れるや、玉座を立ち、まろぶように長い階(きざはし)を走り降りてきた。