パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第10章 愛縁

　足許にピンクの撫子の花が群れ咲いている。賢はしゃがみ込み、その花を幾つか摘んだ。こうしていると、またも遠い記憶に意識が攫われそうになってしまう。







　こうしてしゃがみ込んで花を摘んだのは、いつだったか。賢の脳裡に一つの光景が浮かび上がる。それは川原一面に咲く木春菊（マーガット）と、その中で無心に花を摘む自分の姿だった。ジュチと暮らした小さな家こそが賢にとっては〝我が家〟であり帰るべき場所だった。