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サイドストーリー8
第2章 キミの体温 ボクの吐息
いつも忙しいけれど、仕事より私を大事にしてくれていることは
ずっとずっと感じてた。
ありがとう。

「1日はずっと一緒にいられないけど、朝は一緒に居られる」
「うん」
「初日の出を見に行こうぜ」
といい考えが浮かんだと機嫌が直った。

1月1日の朝早くに待ち合わせをして。
赤いアウディに乗っていつもの道を通っていつもの葉山マリーナに着いた。

「もしかして船を出すの?」
「出すよ。誰もいない海の真ん中で二人きりで初日の出を見るぞ」

そう言って寒い中出航の準備をする。

初めてのデートから何回もこの船に乗せてもらったっけ。
初デートを懐かしく思いながら、私もこの2年で少しずつ覚えた準備を手伝った。

いつもとは違う方向に動いているクルーザーに
「どこに行くの?」
「秘密」
嬉しそうに答えて

着いた先は、横浜港だった。

秋に完成したばかりのベイブリッジが誇り高く横浜港を横断している。
そして丁度登り始めた太陽は、そのベイブリッジとリンクして
真っ赤な火の玉になって目の前に現れた。

「すごい」

誰もいない海の上から
ベイブリッジの向こうの水平線から太陽が1990年を照らし出した。


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