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サイドストーリー8
第25章 恋人宣言
梅雨が記録的な早さで明けた7月。
土曜日だって言うのに直哉は相変わらず仕事で
私は一人で買い物に行って、夕飯を食べた。

大して面白くもないテレビを見ていると
ガチャっと音がして玄関のドアが開く。

「葵、いる?ごめん。遅くなった」

大して悪びれもせずに、機嫌のいい声で直哉が来た。

ガサッガサッと音とともに部屋に入ってきて
何事かと思ったら、笹を抱えていた。

「な、なに?」
「七夕」

あぁ・・・今日は七夕か。
大人になって、願いごとをすることもなくなって
七夕というイベントよりも、会社が休みの土曜日のほうが重要になっていた自分に
ちょっと悲しくなった。

「短冊書こうぜ」
「ええぇ?」
「短冊」

短冊・・・ねぇ。

「いいね!」

うん!いい!
子供の頃みたいに願い事を書こう!

サインペンを出してきて
厚手のメモ帳を細長に切った。

何を願おう・・・
直哉と結婚できますように?
直哉とけんかしませんように?
仕事が上手くいきますように?
健康でいられますように?

え・・・

子供の頃は短冊に書く願い事なんかすぐに決まったのに。

私はいざ書こうと思うと、1つに決められなかったし
1番の願い事の、直哉のことは『願う』事とは違う気がした・・・



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