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キミの体温 ボクの吐息
第4章 の
広い海の上、たった一隻のクルーザーの上で
俺たちが繋がっているのはこの手だけ。

「夕飯は少し早めにマリーナのイタリアンでいいかな?」
「うん」
「ここのマリーナは夕日がきれいで有名なんだ。一緒に見たいと思って」
「ありがとう。こんな時間を過ごせるなんて・・・嬉しいわ」

ゆったりとした時間の流れの中で
会話はとぎれとぎれで
ずっと話していなくても俺たちは満足だった。

言葉を発しない代わりに
ただ一つ繋がっているお互いの片手に
気持ちが集中して、その手が世界で最も大事な物の様な気がする。

「大阪には新幹線で行くのよね?」
「あぁ、東京発の最終で行く。
もっとひかりが新横浜に停まればいいんだけど。1日3本じゃな。
どうしても東京まで行ったほうが早い」

「え?最終?」

今までのゆったりとした空気が一瞬で崩れる様な勢いで
白石がガバッと上半身を起こした。

「え?うん。最終を取ったけど。何かまずい?」
「日曜日の東京発新大阪行きの最終でしょう?」
「そうだ、けど」

白石は可笑しそうにクスクス笑って
元の様に寝そべって再び俺の手の中に自分の右手を滑り込ませた。

俺はその手をきゅっと握り直す。

「知らないの?ビックリするわよ」
「なんで?」

「シンデレラエクスプレス」

白石は楽しそうに言った。
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