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愛しい記憶
第10章 愛堕(回顧)


たまにリビングで鉢合わせると、姉ちゃんはいつも鏡台の前で化粧をしている。



そして鏡越しに俺を見つけて、早々に化粧を切り上げて立ち去ろうとする。



すれ違う時のシャンプーの匂い。



衝動的に手首を掴んで、あの時のやけど跡を見つめる。




「離してっ……」



「どこ行くんだよ」



「………どこでもいいでしょ」





いつだって優しく微笑んでくれていた姉ちゃんは、冷たくそう言って俺を振り払おうとする。




「良くない」



「っ………」



何故そんなに化粧をする必要があるのか。



目の上の淡いピンクが、俺に揺さぶりをかける。







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