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この前、人を拾いました
第52章 ⑥―2 彼は期待を裏切らない
オフィスに私の驚きの声が響き渡り、みんなが一斉に私を見た。
ハっとして自分の口を手で押さえ、すみませんと大きく頭を下げると、私は喫煙所のあるベランダまで早足で向かった。
「みきさん、耳が痛いです。」
電話から若村さんが弱々しく言った。
「あ……すみません……ちょっと、本当にびっくりしちゃって……」
期待を裏切らないって…
レイ…あんた…
本当に期待を裏切らなさすぎだから…。
ケータイからは若村さんの笑い声が響いていた。
私の話をダラダラ長いとか言ったくせに、若村さんだって十分回りくどいじゃないかと、心で文句を言う。
「あーでもね、気を付けてください。」
「え?何がですか?」
ベランダに出て寒さに身をすくめていると、急に笑うのを止めて真剣な声になる若村さん。
「誕生日、祝うと怒りますから、礼二先輩」
はぁ?
祝うと怒る?
「何でですか?」
「う……ん、こればっかりは僕も謎でして。怒るだけじゃなくてですね、いつもあんなにテンション高いのに誕生日が近付くとボーっとした感じになるんですよ。」
レイが……
ボーっとする…??
「そんなことあるんですか…?」
今まで異常なまでに多動なレイは見たことがあっても、ボーっとしているのは見たことがなかったので、若村さんのいうことはにわかには信じがたい。