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この前、人を拾いました
第56章 ⑥―6 それでもやっぱり
総一さんは一通り話終えると、ふぅ…と息を吐いた。
「みきさん、なぜあなたが泣くんですか?」
「えっ?」
言われてから、自分の頬に涙が伝うのを感じた。
横から若村さんが、スッとハンカチを渡してくれたので、すみませんと頭をさげて受け取る。
あんなに明るいレイにそんな過去があったなんて…っ…
驚いて、苦しくなった。
そして同時に、救ってあげたいという気持ちで一杯になった。
「………私…今年のレイの誕生日祝います。」
「みきさん…今の話、聞いていましたよね?レイは祝われることを望んでいません。やめておいた方がいい。」
分かっている。
でも……
「………レイが祝われたいか祝われたくないかじゃなくて…。私が…祝いたいんです。」
涙を拭きながら、総一さんをじっとみた。
すると総一さんは再びはぁ…と大きくため息をつき、イスをクルッと回して窓を眺めた。
仲が悪いと思っていたけれど、総一さんはレイのことをすごく考えている。
とても弟想いの素敵なお兄さんだ。
「礼二は、不幸なことなんて何もないですねぇ」
しばらくして総一はまたイスをクルッと回して私に向き直った。
「え?」
「だってこんなにもあなたに想われている。本当に羨ましいやつですよ。」
そう言って、ニコッと笑った。