この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
この前、人を拾いました
第82章 ⑨ー4 少女漫画のようにはいかない
昔そのままの自分の部屋。
私はベッドに倒れ込む。
今これどういう状況なんだろ。
ひとしきり泣いたからか、なんだか謎にスカっとした気持ちだ。
お父さんもどっかいっちゃうし、レイもどっかに行ってしまった。
結婚の、挨拶にきたつもりだったのに、気付いたら実家で破局。
婚約者どころか、彼氏もいない女になっちゃったし。
「……しきり直し、なのかな…っ」
就職して上京するまで住んでいたこの地。
原点とも言える、この部屋の中で私はそんなことを思う。
「っ……意外と…クるなぁ……」
そんなことを呟きながら、また、涙が勝手に溢れる。
すると、微かにガチャと玄関の扉が開いた音がして、私は身体を起こした。
どっちだろう……
頰を伝う涙を乱暴に拭ったとき、『あら、お父さん』というお母さんの声が聞こえた。
お父さん……帰ってきたんだ…
ちらと時計を見たら、もう18時だった。
随分経った…
どこで何をしていたんだろう。
そして、レイは、どこで何をしているんだろう。