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愛されたいから…
第15章 イルマの妄想
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今はイルマが風呂だから、俺は豊と2人で夕食の後片付けをしていた。俺を心配する豊は俺に

『和也はどんなだった?』

と不安な顔で聞いて来る。俺は豊に

『全く変わっていなかった。相変わらずの我儘で自分の望みは俺なら何でも聞いてくれると自信タップリの和也ままだった。』

と答えていた。あの頃、和也とばかりいた俺に

『お前が選んだ道なら俺は反対とかしないが、どこまで行っても男同士なんだと覚悟はしておけよ。』

と和也との関係に俺が傷つく可能性を注意してくれていた豊だったが、俺は俺が思っていた形とは違う形で和也に傷つき、生活が荒れるほど仕事しかしない人間になっていた。

だからそれを全て知っている豊は

『それで、今度は懲りずに自信がない男の子かよ?』

と少し呆れて俺に言う。俺は

『今だから言えるけど、多分、あの時の俺は和也を愛してはいなかった。だけどイルマは違うんだ。もしイルマを失くしたら俺は和也の時とは比べものにならないくらいに壊れると思う。』

と言っていた。豊は

『つまり、今更、これが龍平の初恋だってか?いい歳したオッサンがそれは気持ち悪いぞ。』

とわざとふざけて俺に言う。豊はいつもそうやって俺の気を楽にしてくれる。だから俺は

『そう初恋、しかも付き合って3ヵ月未満のホヤホヤだから、お前は帰れ!邪魔すんな!』

とわざと豊のおふざけに乗ってやる。豊は

『今夜は聞き耳しっかり立てといてやるよ。』

と言って笑っていた。俺だって豊の心配は充分にわかっている。高校の時は普通にお互いの女を連れて遊びに行ったりもしていた。

俺がこんな風になるなんて、あの頃の俺も豊も全く想像すらしていなかった。将来の夢は文芸出版社の編集長でマイホームパパの子供が2人とか俺は思っていたような気がする。

文芸ではなく官能漫画というジャンルで俺の編集長の夢は叶ったが、両親の離婚や和也という男の存在を知ってしまった俺はマイホームパパなんかと思うようになりその夢に冷めていった。

今は、イルマが俺のそばに居てくれる。子供が居ないのが寂しいと感じるのならイルマと2人で猫でも飼えばいい。ただ深い愛だけがある家庭になれば、俺はそれで満足だと思ってしまう。
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