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愛されたいから…
第16章 イルマの価値観
ただそうやって苛立つ俺に優しいから南郷さんは普通に接してくれる。本当は南郷さんだって俺と唯の関係を聞きたい気持ちとかあるはずなのに、全くそれに触れる素振りを俺には見せて来ない。

『唯の事、聞かないんですか?』

だからなんとなく俺の方が聞いてしまう。南郷さんは

『お前が2度と会いたくない奴なんだろ?なら、俺には全く関係のない人間だから聞いても仕方がない。』

と答えてくれる。

『じゃあ…、何故今日はあのお店を選んだんですか?』

『流行りの店は人が多くて落ち着かない。あの店なら俺が知る限り10年以上あそこでやっているから味には問題がないはずだ。落ち着いてそこそこの味を楽しむ方が好きな奴と飯を食う店としては最高だと俺は思っただけだ。』

それが当たり前のように言ってくれる南郷さんがやっぱり俺は好きだと感じて来る。そして、この人の価値観や基準に俺は違和感を感じずに自然に一緒に居られるんだと安心してしまう。

出かける前は、早く南郷さんに抱かれたくてガツガツとしていた自分が今は落ち着いてゆっくりと南郷さんに抱かれたいとか思ってしまう。

南郷さんの家に着いて南郷さんが

『風呂に入る。』

と言って俺の手を引いてくれる。でも、決してガツガツとはしていなくて、ゆったりと自然にそれが当たり前なんだというような感覚で一緒に風呂に入る。

風呂では2人でふざけて洗いっこして俺は南郷さんを刺激する。泡でヌルヌルの手で南郷さんの首筋や肩を俺はゆっくりと洗っていく。南郷さんも俺に同じようにしてゆっくりと洗ってくれる。

『あんっ…♡』

俺の方が敏感で俺の方が我慢出来なくなって来るとクスッと笑った南郷さんが

『そんな可愛い声を出されたら洗えない。』

と言って俺の乳首をクニクニと摘んで回し始める。

『それって…、あぁん…、洗ってないよ。』

文句を言う俺にキスをしてから

『なら、さっさとベッドに行くか?』

と南郷さんが聞いてくれる。全てを俺に合わせようとしてくれている南郷さんに俺は俺からキスを返して

『南郷さんが連れてって…。』

と甘えた声でねだっていた。自分の中で南郷さんがゆっくりと深い愛情で抱いてくれるのを確信している俺はそうやって南郷さんを試していた。
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