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愛されたいから…
第17章 休日と仕事
いや、親父は絶対に文句なんか言わない…、むしろそうやっていつまでも若い姿のお袋に一番悦んでいるのが親父自身だ。何故なら親父はとにかくお袋にベタ惚れだからだ。

親父はお袋に出会う前には漫画家として既にデビューを果たしていた。しかも親父はその時からもう天才とか言われている立場の人で、そんな親父が街で一目を惚れしたというお袋に

『君には一切、何もさせない。家事も必要ない。ただ僕のそばにだけ居て下さい。』

といきなりプロポーズをして今の豪邸を買い与え、お手伝いさんを雇い、お袋にはセレブな暮らしだけを完全保証したという親父だった。

だけど、自由奔放なお袋はお手伝いさん付きのセレブ生活がただ退屈なだけだと言って今度は親父から漫画を学び、お袋までもが漫画家としてデビューしてしまったというとんでもない夫婦が俺の両親だ。

そんな両親がこのパーティーの中では一番目立つ中心というポジションだから、俺はあの人達の七光りでここに居るんだという自分のコンプレックスにまた苛まれ始めていた。

俺がそうやっていじけていると坂口さんが俺に

『ご挨拶に行かないのですか?』

とか聞いて来る。

今夜のパーティーを主催する出版社の社長さんを始めとして、この出版社のトップ部門である少年漫画編集部のアルファの編集長さん、その他はアニメ制作会社の関係者や親父のキャラを使用している企業の方々など10人以上の人々に囲まれている大先生にわざわざ売れない漫画家としての立場である俺が挨拶なんかに行けば俺はそのお取り巻きの人々に親父の七光り目当ての息子だと露骨に嫌な顔をされるだけだ。

『自分の親なんだから、家に帰ればいつでも会える人達にいちいち挨拶なんかしませんよ。』

と俺は坂口さんにふてくされるように言ってしまう。

だから…、出版社のパーティーとか嫌いなんだ…

そう思う事で俺自身が自分の性格のせいでこのパーティーから浮いているのに、俺はそれが大先生である両親のせいにしていじけるだけの無名漫画家のままの地味なダメ男として壁際に佇む事しか出来なかった。
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