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愛されたいから…
第18章 イルマの両親
あの人達の七光り…、俺がどんなに頑張ったとしても世間は必ずそう言うはずだ。

スポットライトのど真ん中を堂々と夫婦で歩く両親に壁際で地味にいじけるだけの息子が俺…。

そんな俺にいつまでも付き合ってはいられない忙しい立場の編集部担当の坂口さんが他の担当する先生を見つけたらしく

『ちょっと失礼します。』

と言って俺の前から立ち去っていた。こんな時はリッちゃんが居ないと俺は寂しいもんだな…。そんな事をぼんやりと思っていた俺に

『楽しんでますか?』

と南郷さんが声をかけてくれた。これだけの人混みでもちゃんと俺を見つてくれた南郷さんに俺は思わず嬉しくなる。

今夜の南郷さんはやはり普段はあまり着ない紺色のスーツ姿で、きっちりと締めたネクタイは少し派手目な黄色だったけれど、それがまるでモデル並にカッコいいから、そんな南郷さんに会えただけで今夜の俺はここに来た価値があるとか俺は思ってドキドキとする。

『南郷さんは楽しんでいますか?』

と逆に俺の方が聞いてみる。南郷さんは編集長らしく

『主催側のサラリーマンにパーティーを楽しむ余裕はありません。でも、先生方には充分楽しんで貰わないと困ります。』

と笑って俺に言ってくれる。俺がこういう華やかな場所が苦手なのはわかっていて少しでも楽しんで欲しいと気を使って南郷さんが言ってくれている。

俺が南郷さんに、なら楽しみますと返事をしようとした瞬間、俺の首が締まりそうなくらいの勢いで誰かが俺の背後から俺をガシッと捕らえていた。

『イッちゃん、なんで一緒にオーストラリアに行かないの?』

と低く重い声が俺の耳元で囁いて来る。

『父さん!?』

俺は自分の背後にいつの間にか来ていた親父にそう叫んでいた。お袋を最愛の妻として溺愛をしているこの親父は、お袋にそっくりな息子の俺も当然、有り得ないほどに溺愛をしている人だ。

『イッちゃん…。』

と基本的に無口な親父が俺のおんぶお化けのように俺に体重をかけて来る。だから俺はため息混じりに

『だから、母さんには言ったけど、新年から俺はガンマとベータの両方で描くからその準備に新年からは忙しいんだよ。』

と説明する。

『ガンマ…?』

『丁度良かった。こちらガンマの編集長の南郷さん、俺の担当もしてくれているんだ。』

俺がそう言って背後の親父に初めて南郷さんを紹介していた。
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