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愛されたいから…
第18章 イルマの両親
俺はあくまでも漫画は趣味的にしか描いたつもりはなかったのに、その作品が親父の手で俺の知らない所で勝手に独り歩きをしていた。だから…

『父さんとは、俺は違うんだよ…。』

そんなコンプレックスを俺が抱くには、漫画家としてデビューをしてさほど時間の必要がなく、そのコンプレックスを未だに抱いたまま俺は今日まで来ているという状況だ。

明日、南郷さんにまた会えるのは嬉しいけど…、やはりあの父さんだから怖いよな…

そう考えながら俺は久しぶりに眠れない夜を過ごす事になってしまった。

翌日、昼過ぎには南郷さんが俺の家に来てくれた。ここからは俺の車で俺の実家に一緒に行くからだ。ひたすら不安な顔をする俺に南郷さんは

『時々、漫画家になるのを心配する親御さんが居る先生には契約の時に親御さんも一緒に挨拶をする編集だっているし、ましてやうちの部門は官能だから、親としての大先生の心配はわかる気がする。』

と運転をする俺の隣で俺の気が楽になるように話しをしてくれる。だけど俺は

『その程度であの父さんがわざわざ呼び出したりはしないと思うんだ…。』

とやはり憂鬱になってしまう。

南郷さんは出来るだけ俺が緊張しないようにと、俺がお袋にそっくりで笑いそうになったとか、そんな話しをしてくれて俺達は実家に到着していた。

だけど俺は南郷さんに

『親父にもし何か言われたとしても迂闊に返事はしないで下さい。』

とだけ警告していた。南郷さんは俺のその異常な警戒心に不思議そうな顔をするだけだった。実家の玄関に入ると俺を出迎えたのはお袋でなくこの家にお手伝いとして来ている崎さんだった。

『おかえりなさい、坊っちゃん。』

『母さんは?』

『先程、美容室へとお出かけになりましたよ。』

と崎さんが笑顔で俺に不安を与えて来る。つまり、今からの親父との対面ではお袋の助けを俺は借りられないという状況だ。うちは基本多数決で、お袋が俺の味方をすれば100%親父がそれに従うのにその肝心のお袋が居ないのだと俺はますます不安になる。

てか、わざわざ俺を呼び出しておいてお袋を出掛けさせたのなら、親父の話しとやらは、かなり俺には耳が痛い話しなのだと俺は色々と勘ぐってしまう。

普段の親父ならお袋が出掛けるのを基本的に嫌い、美容室程度でも親父はお袋について行くのが当たり前という人だ。
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