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愛されたいから…
第8章 イルマの実家
2人が俺の寝室から消えて慌てて俺は普段着に着替えてリビングに向かっていた。昨日の荷物のカバンは中身だけ洗濯機に入れてリビングに置きっ放しだった。

リビングではなんだか南郷さんと大地が睨み合っていて気まづい雰囲気になっていたから俺はため息をつきたくなる。南郷さんは俺の友人関係に対してどうすべきかと気にしている。

彼氏ですって堂々とは俺と付き合えない関係に困っている南郷さんを大地が睨んで追い詰めているとか俺からすればこれは最悪の状況だ。南郷さんが大地に気を使って

『今日は帰ります。明日、次のネームの打ち合わせをしたいので編集部の方へ来て頂けますか?』

とあくまでも編集長の顔で俺に言って来る。南郷さんだって今日までが休みだから…、本当は俺はこのまま一緒に居たかったのに…。

俺はそんな気分を抱えたまま

『明日、何時頃に伺えばいいですか?』

と言って漫画家の顔を南郷さんに向けていた。

『出来れば夕方にお願い出来ますか?』

と南郷さんが言って来る。明日は南郷さんは会議だって言っていたから、夕方にしか時間が取れないんだ…。

『わかりました。』

そう言った俺に頭を下げて南郷さんが俺の家から出て行った。南郷さんが居なくなった途端に大地が俺の顔を持ち上げるようにして

『お前、目が凄い腫れてるけど、泣いたんか?』

とか聞いて来る。俺は大地を突き放して

『泣いてねぇよ。ちょっと疲れて寝不足な感じだっただけだ。』

と不機嫌に言ってから旅行で使ったカバンの中に大地のIDがないか探してみた。もしなければ、洗濯機の中で大地のIDが洗われているかもしれないな。

そんな事を考えている俺に大地が

『あれが、彼氏か?何しに来たんだ?』

と俺に言う。彼氏なんだから何しに来ても構わないじゃん…。そう思う俺は大地に口を尖らせて

『ちょっと寝不足の俺を心配して見に来てくれただけだよ。IDはもしかしたら洗濯されてるかもな。』

と答えていた。大地はため息をついてから

『あぁ…、じゃあ、もういいよ。恭一さんに頼んで再発行の段取りして貰わないと…。』

とか言って来る。

『帰るのか?』

『帰るよ…、IDが見つからないんじゃ俺がここに居る意味がねぇもん。』

と言った大地はさっさと俺の家から出て行ってしまっていた。
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