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八重の思いー私を愛した2人の彼氏
第13章 ルーキーの反抗-陸
千弥が退社して、あの依頼は一時保留にはなった。だけど話自体は消えていない。僕は知らん顔を通しているけれど……。
「三苑さんが会社を辞めてから、随分と大人しくなったんじゃないか小野寺?」
「別に……。普通に仕事をこなしているだけ」
そう、武田に言われる通り、僕はただ淡々と回って来る仕事を、当たり障りなくやっているだけなんだ。千弥が居た頃のような楽しさなんて……無い。
「あのな、少し肩の力を抜いたらどうだ?」
「そこまで意地になってないよ」
「そうか? 今の小野寺を見ていると、周りも見ずに仕事だけをしているように見えるんだ」
「僕が? そんなわけないって」
……嘘。
あの一件から、この会社に不信感がつき纏う。
あんな身元不確かなクライアントでも依頼を受ける会社、僕の中にそんな印象が出来上がってしまったのは確か。……今の僕は凄くやりきれない。
「同期のルーキーなんだから、堂々としてろよ小野寺。お前がそれじゃ、俺たちのほうが辛い」
「だから僕はこんなものだって、武田が勝手に買い被り過ぎてるだけだよ」
「……それ、本心か?」
「え……?」
武田はなにを言いたいんだろう。千弥が退社した後、武田はしつこく僕に絡む。迷惑とまては思っていないけど、鬱陶しいとは思ってる。暫くはまた一人でやりたかったから。
「業務成績を見ただけで分かるだろ、小野寺が群を抜いてトップだと。それなのにこんなもの? 俺たちをバカにしているのか?」