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八重の思いー私を愛した2人の彼氏
第13章 ルーキーの反抗-陸

複雑な思いを持ちながらも仕事だけはこなす僕、でもあれから武田は一切僕に近寄らなくなった。それが良いことなのか悪いことなのか、今のところ僕には分からない。淡々と一人で仕事をするのには良いけどね。
この時期、千弥は蓮のところで仕事も軌道に乗り始め、テレビや雑誌で蓮の名前を見かけることが多くなったと思う。ただし、蓮は絶対に千弥を表には出さない。千弥を守るため、それは僕も理解してる。そもそもこの会社で雑誌取材を受けたのが、千弥が見つかる原因になったんだから。
(いい加減冬だぁ……)
たまに雪が舞うようになったこのシーズン、実を言うと空間コーディネーターの仕事は少ない。X'masや年末年始が控えているんだから、改装シーズンじゃないとも言うよ。だから仕事もこれから年明けに向けてのデザイン系の仕事ばかりで、大掛かりなコーディネーターの仕事なんて無きに等しいんだ。
「……小野寺ちょっといいか?」
「部長?」
珍しい、課長ではなく、部長直々の呼び出しだなんて……。呼ばれて行かないわけにもいかず、僕は部長の個人スペースへと向かう。そうしたら、なぜか武田が部長の側に居た。
「なにか用でしょうか部長?」
「夏頃にあった話を覚えているか小野寺?」
「夏……ですか」
「ホストクラブの新規店舗の話だ」
「あぁ、ありましたね」
その話かと思う。
大体にして千弥が居なくなったんだから、流れてもおかしくはなかった話なのに、どうして未だ保留になっているのか、こっちが聞きたいくらいだよ。

