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八重の思いー私を愛した2人の彼氏
第5章 不安
朝、目が覚めたら、俺のベッドに千弥はもう居なかった。夜中か早朝に自分の部屋に戻った、そう考えていいと思う。
(それにしても、あの変わり具合は一体……)
こうして一緒に住んでいても、どこか俺には遠慮していた千弥。それがベッドの上では、尋常じゃない乱れよう。そこになにがあったのか問おうとしたが、当の千弥に止められ聞けず終いに終わる。
「……結局のところ、千弥に負けて乱暴に抱いてしまった俺だけどね」
千弥の願いと俺の欲望、この2つが混ざり合い、あんな強引なセックスになった経緯。……本当は優しく抱きたかった、だけど好きだからこそ千弥の乱れた姿に引きずられた。こんな時、男性というものは悲しい生き物、己の欲に歯止めが掛からないもの。
(千弥の過去になにが?)
軽くシャワーで汗を流しながら、昨日のことを考える。あれは……あんなやり方は、過去になにがあった証拠、しかも見え隠れする男性の影。
「陸に聞けば分かるのかな?」
俺よりも陸のほうが、千弥との付き合いは長い。もし男性の影があれば、あの陸だったら気づくはず。
そう思い、簡単に着替えてから朝食のためにキッチンに立つ。
「あぁ、昨日の残り」
帰るのが遅くなる陸のために、テーブルセッテングはしていたが、陸が食べた気配はなし。残ったシチューとロールキャベツは、もう一度手を加え、クリームコロッケとスープにしてしまった。これなら朝でも食べられる範囲内。