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八重の思いー私を愛した2人の彼氏
第5章 不安
「……おはようございます」
「おはよう千弥」
「ごめんなさい、今日朝食は要りません。それど用があるので帰りは遅くなります。……行ってきます」
「…………」
昨日とは打って変わり、所在無さげにリビングに現れた千弥。いつもは出勤手前の比較的軽装で出て来るのに、今日は出勤用のスーツを着て、朝食も食べずにそのまま出て行ってしまった。
昨日の話を総合すれば、千弥の出勤時間はまだ後のはず。なのに俺を避けるように、千弥はさっさと出勤したのは、気のせいではないと思う。
「おはよう……蓮」
「おはよう陸、今日はのんびりだね?」
「会社の前に1件回らないといけないから、いつもより遅めで良いの」
「……なるほど」
まだ眠そうな陸の顔。これは帰って来てからゲームかな? そんなことを考えながら、朝食をテーブルに置く。
「? 千弥は?」
「朝食は要らないと、もうマンションを出たよ」
「なんで? 時間的にまだ早いじゃんか」
「それを俺に言われても困る」
自分用の朝食を置いて椅子に座れば、陸のほうが噛み付いて来る。
「昨日さ、千弥と寝たよね? 帰って来たら、蓮の部屋から千弥の声が聞こえた。もしかしてそのせい?」
「……正直分からないんだよ。確かに昨日、俺は千弥を抱いた。だけど疑問も浮かんでしまったかな」
「疑問?」
「陸が知っている中で、千弥に彼氏が居たことがあるかい?」
「いや、話にも上ったことがないよ。入社から今まで、彼氏どころか男性社員にも必要以外あまり近づかないんだ。僕だって普通に話してくれるまで、何ヵ月かかったかな?」