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この香りで……。
第5章 香り
奈々葉と同期の坂村美希《さかむらみき》が背中から声をかける。小顔を近づけて、くんくんと鼻を鳴らす。
「美希、おはよ……」
奈々葉と同期の美希は息が合うのか、いつもここぞという時に居てくれる頼もしい相談相手だ。ただ、天性の甘え上手の肉食系という性格と他人の彼氏を〈獲物〉にする能力は周りの女性からは注意人物と恐れられていた。
「奈々葉さあ……今日、何か付けてる?」
図星だった。ティッシュに一滴垂らした香水をスーツの内ポケットに忍ばせていた。誰かに昨夜の行為を悟られるような気がして……。
子犬のような美希の目が奈々葉を探るように見る。
「……えっ、分かる?」
奈々葉は自分の襟を立てて、鼻を鳴らした。
「へえ、何かあった?」
子犬のような目が更に奈々葉に近づく。
「いや……何も……うん……ないよ……何も……」
「ふーん……」
まだ、美希の目が奈々葉を疑っているように見えた。
ふう……
――さすがに鋭いなあ。美希って……。でも……。
奈々葉は鼻を自分の脇に近づけて、鼻を鳴らした。
「美希、おはよ……」
奈々葉と同期の美希は息が合うのか、いつもここぞという時に居てくれる頼もしい相談相手だ。ただ、天性の甘え上手の肉食系という性格と他人の彼氏を〈獲物〉にする能力は周りの女性からは注意人物と恐れられていた。
「奈々葉さあ……今日、何か付けてる?」
図星だった。ティッシュに一滴垂らした香水をスーツの内ポケットに忍ばせていた。誰かに昨夜の行為を悟られるような気がして……。
子犬のような美希の目が奈々葉を探るように見る。
「……えっ、分かる?」
奈々葉は自分の襟を立てて、鼻を鳴らした。
「へえ、何かあった?」
子犬のような目が更に奈々葉に近づく。
「いや……何も……うん……ないよ……何も……」
「ふーん……」
まだ、美希の目が奈々葉を疑っているように見えた。
ふう……
――さすがに鋭いなあ。美希って……。でも……。
奈々葉は鼻を自分の脇に近づけて、鼻を鳴らした。