この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
秘密のピアノレッスン
第5章 不安
12月に入ったころ、元々ほとんど確定ではあったが、付属の女子大に合格が決まった。
すぐに母に伝えよう。母の望む進路にしたのだから、喜んでくれるはずだ。
学校から帰ってきて、リビングで趣味のお花を生けている母のところまで向かった。
「何ですか、はしたない。家の中を走るなんて」
「ごめんなさい……ママ、無事に大学合格したの」
息を切らしながら報告をした。けれど、返事は思ったものと違っていた。
「当然でしょ、楽な道を選んだんだから。出来がいい子たちは、外部の大学を受けるのよ」
母は嘲笑にも見える微笑を浮かべて、私から視線を外すと、また手元を動かし始める。
楽?
……がんばりたかったことを諦めたのに?
私は、自分が楽な道を選んだようには思えない。
ママが、「共学なんて堕落してしまうわ」と言っていたのに。
ママが、「付属の女子大じゃないとだめよ」と言っていたのに。
ママが……いつも、私の進む道を閉ざすのに。
ママ……。
これでも、ダメなの?
なぜ、笑ってくれないの?
すぐに母に伝えよう。母の望む進路にしたのだから、喜んでくれるはずだ。
学校から帰ってきて、リビングで趣味のお花を生けている母のところまで向かった。
「何ですか、はしたない。家の中を走るなんて」
「ごめんなさい……ママ、無事に大学合格したの」
息を切らしながら報告をした。けれど、返事は思ったものと違っていた。
「当然でしょ、楽な道を選んだんだから。出来がいい子たちは、外部の大学を受けるのよ」
母は嘲笑にも見える微笑を浮かべて、私から視線を外すと、また手元を動かし始める。
楽?
……がんばりたかったことを諦めたのに?
私は、自分が楽な道を選んだようには思えない。
ママが、「共学なんて堕落してしまうわ」と言っていたのに。
ママが、「付属の女子大じゃないとだめよ」と言っていたのに。
ママが……いつも、私の進む道を閉ざすのに。
ママ……。
これでも、ダメなの?
なぜ、笑ってくれないの?