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記憶の彼方に眠る恋
第7章 失われた記憶
紗友莉が説明を終えると、拓麻が少しだけ落ち着きを取り戻した様子で言った。
「俺の知る限り、紗友莉は嘘をつかない人だし、きっと紗友莉の言うとおりなんだろう。疑ったみたいになって、ごめんな」
「いいの。今の拓麻には信じがたい話だろうから……」
紗友莉も幾分冷静さを取り戻してきたことで、気づいてしまった。
拓麻のこの反応は、すなわち、「記憶を失っていた間の記憶」をすっかり忘れてしまっている何よりの証だと。
そんな紗友莉の想いを知る由も無い拓麻は、元気よく言った。
「紗友莉のお陰で、記憶を取り戻せたんだな! 俺の命の恩人だ! 本当にありがとう」
紗友莉は寂しさを堪えて微笑み、「私だけの力じゃないよ」と言いつつ、心では泣いていた。
いつしか空を覆う雲が黒っぽくなっている。
そんな空や紗友莉の気持ちとは裏腹に、拓麻は快活な様子で言った。
「じゃあ、とりあえずうちへ一緒に戻ろう。この空の感じだと、一雨来るかもしれないから、急がないとな。お互い、傘は持ってないみたいだし」
「俺の知る限り、紗友莉は嘘をつかない人だし、きっと紗友莉の言うとおりなんだろう。疑ったみたいになって、ごめんな」
「いいの。今の拓麻には信じがたい話だろうから……」
紗友莉も幾分冷静さを取り戻してきたことで、気づいてしまった。
拓麻のこの反応は、すなわち、「記憶を失っていた間の記憶」をすっかり忘れてしまっている何よりの証だと。
そんな紗友莉の想いを知る由も無い拓麻は、元気よく言った。
「紗友莉のお陰で、記憶を取り戻せたんだな! 俺の命の恩人だ! 本当にありがとう」
紗友莉は寂しさを堪えて微笑み、「私だけの力じゃないよ」と言いつつ、心では泣いていた。
いつしか空を覆う雲が黒っぽくなっている。
そんな空や紗友莉の気持ちとは裏腹に、拓麻は快活な様子で言った。
「じゃあ、とりあえずうちへ一緒に戻ろう。この空の感じだと、一雨来るかもしれないから、急がないとな。お互い、傘は持ってないみたいだし」