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記憶の彼方に眠る恋
第2章 過去の恋、現在の憧れ

「もしもし! 紗友莉、久しぶり!」
電話の向こうで、いつもと変わらぬ元気な声が響く。
美香もどうやら紗友莉と同じく、夕食まではまだ少し時間の余裕があるらしく、電話をしていても問題ないらしい。
お互い、仕事のことや趣味のことなど、近況を伝え合ったあと、紗友莉は何気なく、先日鳴澤に駅まで車で送ってもらったことを話した。
その出来事の顛末を聞き終わるや否や、美香がイタズラっぽい声ですかさず言う。
「またその、鳴澤部長さんの話だね! 紗友莉はもう、部長さんに夢中なんだなぁ」
紗友莉としては、そういうことを伝える意図をもって話したわけではないので、弁解気味に言葉を返した。
「そ、そんなわけではないってば。こないだ、そういう出来事があったよっていう話。それだけだよ」
「でも、以前も似たようなこと言ってなかったっけ。そのときは確か、その部長さんに傘を貸してもらったって言ってたような気が……」
美香の記憶力がちょっと恨めしくなってきた紗友莉は、苦笑しながら答える。
「確かに、去年そういうことはあったし、美香にも話したかな。でも、鳴澤部長に対して、その好意を抱いているとか、そんなはっきりとした想いがあるわけじゃないの。以前も話したと思うけど、『雨が降ってるときに、スッと傘を差し出してくれるような、鳴澤部長のような男性って素敵だなぁ』っていう、ただそれだけのことで」
電話の向こうで、いつもと変わらぬ元気な声が響く。
美香もどうやら紗友莉と同じく、夕食まではまだ少し時間の余裕があるらしく、電話をしていても問題ないらしい。
お互い、仕事のことや趣味のことなど、近況を伝え合ったあと、紗友莉は何気なく、先日鳴澤に駅まで車で送ってもらったことを話した。
その出来事の顛末を聞き終わるや否や、美香がイタズラっぽい声ですかさず言う。
「またその、鳴澤部長さんの話だね! 紗友莉はもう、部長さんに夢中なんだなぁ」
紗友莉としては、そういうことを伝える意図をもって話したわけではないので、弁解気味に言葉を返した。
「そ、そんなわけではないってば。こないだ、そういう出来事があったよっていう話。それだけだよ」
「でも、以前も似たようなこと言ってなかったっけ。そのときは確か、その部長さんに傘を貸してもらったって言ってたような気が……」
美香の記憶力がちょっと恨めしくなってきた紗友莉は、苦笑しながら答える。
「確かに、去年そういうことはあったし、美香にも話したかな。でも、鳴澤部長に対して、その好意を抱いているとか、そんなはっきりとした想いがあるわけじゃないの。以前も話したと思うけど、『雨が降ってるときに、スッと傘を差し出してくれるような、鳴澤部長のような男性って素敵だなぁ』っていう、ただそれだけのことで」

